みんなの古楽2013(横須賀・ベイサイド・ポケット)

2013年5月26日。

カウンターテナーの弥勒忠史さんプロデュースのシリーズ。5年計画の最終年。

クロマティズムの官能と題して、C.ジェズアルドのまさにクロマティックな曲の数々。1600年前後、遣欧使節が訪れたころの音楽。古典派やロマン派の音楽を飛び越えて、20世紀の音楽に直接呼応するような新鮮な響き。ケプラーが夢想した天空の音楽とは、もしかしたらこのようなものだったのかも知れない。

弥勒さんに最初に接したのは、2005年の藤沢市民オペラ「地獄のオルフェ」ハンス・スティックス役。そのとき、ぼくはオーケストラピットに入っていた。そのころから、弥勒さんの音楽は、並み居る主役たちを喰うことを厭わず、といった気概に満ちていた。その後、平塚で行われた岩崎由紀子さんとのジョイントリサイタルを聴いたのがきっかけになって、横須賀芸術劇場を舞台に弥勒さんが展開している一連の企画を聴きに行くようになった。

多分、最初は、モーツァルトの劇場支配人。これについては、昔このブログに書いた。その後、ほとんどすべての公演を見ていると思う。弥勒さんの企画は、一連のバロックオペラから始まり、一方ではルネッサンスに遡行する古楽器や声楽のアンサンブルに向かい、他方で、ワーグナーやヴェルディに代表されるようなグランドオペラとはちょっと異なるオペラの潮流を辿ることとなった。挙げ句の果てが、メノッティオペラの連続上演。その精華が2009年によこすか芸術劇場開館15周年の記念事業として行われた「タンクレディとクロリンダの戦い」と「ダイドーとイニーアス」の二本立て。これは、歌舞伎風だったり南洋風だったりの舞台設定も含めて、秀逸の出来だった。世界中、どこに持っていったって恥ずかしくない。

近ごろは、この至福の楽興の時に加えて、とびきりのプライムリブを食する楽しみが加わった。ステーショングリル。プライムリブを食べさせてくれる店は、日本には多くない。まあ、赤坂のロウリーズ・プライムリブが有名だけれど、値段がねえ。以前、長男の巌生と西海岸に行ったとき、樋浦さんの推薦でサンフランシスコダウンタウンの何とかって店に行って、すごく旨かったことがある。このステーショングリルは、そんな思い出と共に、本格的なプライムリブが比較的リーゾナブルな値段で食べられる。いい音楽と旨い食事は、不可分。

ウィークエンドの午後、都心とは反対方向に車を走らせて聴き味わう音楽と食事の時は、ぼくたちの日常を贅沢な幸福感で満たしてくれた。

 

 

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