対立時代の言語、政治、文化

npr(National Public Radio)の番組On the Mediaから。
言語学者 Geoffrey Nunberg の新著
Going Nucular: Language, Politics and Culture in Confrontational Times
を巡って。

この本は、同じ週のTalk of the Nationでも取り上げられていたので、きっとずいぶん話題になっているのだと思う。
タイトルになっている”Nucular”という言葉について簡単にまとめておくと。現在のブッシュ大統領は、核のことを”Nucular”と発音する。ところが、父親のブッシュは、”Nuclear”と正しく発音する。ブッシュジュニアは、幼少のころから、この正しい発音を聞いて育ったに違いない。しかし、どこかの時点で、ブッシュジュニアは明確な意識を持って、発音を変えたのではないか、と著者は考える。そして、著者は、ブッシュジュニアがこの発音を選び取ったことに、現在の、強いアメリカ、世界の警察、悪の枢軸、といった言葉と通底する意図を読み取る。(最後の部分は、少しぼくの思いこみが入っている)
で、ちょっと思い当たることがあって。別に個々人が云々ということではないのだけれど。
経済産業省の役人が「なんちゅーか、本中華」というCMでよく耳にする、「チューカ」という言い方を多用することに、あるとき気がついた。もちろん、全員ということではないのだが、霞ヶ関の経済産業省の省舎の中では、けっこう耳につく。
この言葉は、方言研究者に聞けば、即座にどこそこの方言ですよ、という答えが返ってくると思うのだけれど、何か、この言い回しの中に、集団のアイデンティティというかそれとは裏腹の関係にある自分たちを差別化する意識というか、そういったものがあるのではないか。
だれか、「日本の官僚機構とチューカの関係」みたいな本を書いてくれないかなあ。

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