ゴリラに癒される(アスペルガー症候群)

先週のLiving on Earth(National Public Radioの一番組)から。
アスペルガー症候群というのは、以前は自閉症とされていた一群の症状で、知的レベルが正常に近い(もしくは、より優れている)人たちで、「高機能自閉症」の仲間、とのこと。
詳しくは、アスペルガーの館を参照のこと。
一人のアスペルガー症候群の女性が、今では、大学で人類学の助教授になっていて、夫も子供もいて、自分の経験を本にまとめた。その女性へのインタビュー。
彼女は子供の時から、自分と他人との境目を一般の人と同じように認識することが出来なかったようで、人との音声言語によるコミュニケーションが極度に困難だった。一方、読み書き能力は非常に優れており、9歳でD.H.ロレンスを読んだり、7学年でカントを読んだり、といった塩梅。
16歳のころ、学校生活を続けることが出来なくなり、中退。ホームレスとしてさまざまな町をさまよう。薬物やアルコールに頼り、自分自身としていられるのは、ダンスホールで踊っているときだけ。
そんな彼女が、ある時、意を決して入場券を購入して、動物園に行く。そこでの動物や植物に触れることにより、彼女は初めて、自分と外の世界との境目をごく自然なものとして認識する。
やがて彼女は、動物園を職場とするようになる。なかでも、コンゴと呼ばれるゴリラとの心の交流は、ちょっとほろりとくる。彼女は、コンゴにえさのイチゴをやる立場にあったのだが、アスペルガー症候群のせいで、イチゴを几帳面に並べなければ気が済まない。ところが、コンゴは、彼女の並べ方など気にせず、どんどん食べていく。彼女が並べたイチゴが足りなくなり、彼女がイチゴを並べようとする手と、コンゴがそのイチゴを取ろうとする手が、重なりあう。
それまで、彼女は、他の生き物が自分の体に直接触れる感覚に極度に苦痛を感じていたのが、コンゴの手の感触をごく自然に受け入れることが出来る。彼女とコンゴは長い間アイコンタクトを続ける。この瞬間、彼女は、コンゴによって生涯経験したことのない癒しを得る。
とまあ、このような話。
多分、彼女がアスペルガー症候群でなければ、コンゴとのこのような感動的な心の交流は得られなかったのだろうな。彼女の話を聞いていると、例えば「対人関係に障害がある」といった言い方は適切ではなく、「自分の外側との接し方がユニークだ」といった印象を持つ。何というか、話しぶりも含めて、とても魅力的な女性に思えてくる。
ちょっと心が癒されて、得をした気分になれた番組だった。

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