セビリアの理髪師(横浜オペラ未来プロジェクト)

去年のコジがとてもよかったので、今年も。

このプロジェクトの良さを一言で表すと、さわやかさ、といったことになるかしら。

若い指揮者(大家に成り下がっていないという意味で)が、とびきり優秀な歌手とオーケストラメンバーを集めて、(いい意味で本物の)世界的大演出家の助力を得て、世界に発信できるプロダクションを作り出そうとする心意気、志が、素直に舞台と音楽全体に横溢している。見ていて、聴いていて、気持ちがいいのが。素直に楽しみ、素直に応援したいと思えてくる。

歌手のレベルがそろっている。オーディションで選ばれたソリストたちは、それぞれの声の質にぴったりと合う役柄を与えられて、無理がない。

オーケストラは、質がそろっていてテクニックもすこぶる優れている。その個々人の技量が指揮者のコントロール下で調和を乱すことなく引き出されている。

演出は練達そのもの。オペラハウスではなくコンサートホールでの上演だというハンディキャップを正面から受け止めた上で、様式感と新鮮さとを両立させた見事な舞台を作っている。一幕で、アルマビーバ伯爵から書状を見せられて、兵士の指揮官初め全員が驚きのあまり、体の動きが止まってしまうところなど、歌舞伎を彷彿とさせるストップモーションなど圧巻。

無い物ねだりをすると、それは観客の側にある。

残念ながら、やや空席が目立った。こんなにすばらしく志の高い上演がどうして満席にならないのだろう。価格だって、外来の引っ越し公演とは比べものにならないほどの低価格。そして、この真剣さ。

拍手のタイミングが少しずつ遅い。お行儀がよすぎるというか、おっかなびっくりというか。

でも、このプロジェクトを企画した人たちの志は、まさに、この部分にあるのだろう。

いつの日か、満席の客席から、絶妙のタイミングで拍手とブラボーが飛ぶ日が来る。それが文化が街に根付く、ということなのだ。

ぼくも、その日を思い描いて、このプロジェクトの応援を続けよう。一市民として。

ブラービ、横浜オペラ未来プロジェクト!
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